気の弱いなんらかの鳥類
ある日なんらかの鳥類が、お散歩していました。
「あー、お腹が重たいわ」
鳥類は雌でした。
「早く生まれないかしら。トツキトオカもこんな大きなお腹をして暮らすなんて、面倒な人体実験を受けたものね」
そうです。そもそもにして鳥類は卵生であり、卵は毎日のように生むものであり(※にわとりだけ? 毎日じゃない? 品種改良されたからキンカンみたいなのが体内にずっとあるの? 未調査)、何か月も抱えて歩くものではないのではあるし、そもそも人体というか鳥体なので、人体実験じゃないのですが。
そうです。高級バッグ欲しさになんらかの鳥類は、お腹に大き目(といってもネズミとかからしたら大きいけどそうでもない普通のサイズ)の卵を入れられたまま、過ごしているのでした。
そこへ、なんらかの鳥などを捕食して食べる大きな肉食獣がやってきて、
「旨そうな鶏肉だ。食ってやろう」
と、鳥類を脅しました。
「きゃー!! なんらかの肉食動物!」
鳥類は逃げようと思いましたが、イレギュラーな大きな卵のせいで素早く動けません。
「コケ!!」
なんらかの鳥類は、高級ブランドバッグを諦め、契約違反であることを承知で卵を産み落としてばさばさと逃げていきました。
「逃げられた! くそう! 折角の旨そうな鶏肉にありつける機会だったのに!
卵なんて残されても卵アレルギーだから、食べられないよ!」
すごすごとなんらかの肉食動物は、森へ帰って行きました。
そこへやってきたのが、これまたサイバーテクノロジーで人間並みの知能を与えられたハムスター、アリジャーノンとアラジャーノンと公太郎です。
「曰く、われ思う、ゆえにわれアリ」
「ネズミは考える葦でアル」
語尾にアリが付くのがアリジャーノンで、アルが付くのはアルジャーノソです。アラジャーノンなんて居ません。
「卵でアル」
「ここにひとつの卵がアリ」
「アラ、これは大きな卵ね」
頭にアラが付くのがアラジャーノンです。
「バッグ欲しさに戻ってきたものの、わたしの卵がサイバーテクノロジーで人間並みの知能を与えられたネズミたちに狙われているわ」
気の弱いなんらかの鳥類は、病原菌がいっぱいだという噂で人間に嫌われているネズミに近づくことすらできませんでした。
「卵を持ち帰るナリ」
「アラ、それはいい考えね」
「すぐに実行に移すアル」
ネズミたちは、窃盗には慣れたもの(そもそもサイバーな研究室から脱走した脱走犯)なので、これまた盗んだロープで卵をくくって行先もわからぬままひっぱりました。
彼らは20日ぐらいで、なんとかなる種類のネズミなので生後15日でした。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
アリジャーノンが引っ張ってみましたが、それでも卵は動きません。
「見てるだけじゃなくって手伝うのもアリ」
「仕方ないアル」
アリジャーノンと、アルジャーノソで引っ張りました。
うんとこしょ、どっこいしょ。それでも卵は動きません。
「アラ、私も手伝うわ」
「手伝うナリ」
「ハムッチュー!!」
アラとかも手伝いました。
カブは抜けましたが、卵は動きません。
「もう諦めよう。だけど卵は食べたい。ここにキッチンスタジアムを建設しよう! 本日の素材は卵!」
和の鉄人であるアリとフレンチの鉄人であるアラが共に雌雄を決することになり、
「大変おいしゅうございました」
審査員に料理を振る舞いました。
「ちなみに、お腹を空かせたなんらかの肉食獣も食べにやってきましたが、彼、あるいは彼女、あるいは彼獣は小麦アレルギーだったので、カステラだかパンケーキだかは食べられませんでした」
それを気の毒に思ったなんらかの鳥は、バイオテクノロジーで人口蛋白質で作ったステーキを振る舞いました。
「えっ! 精進料理のメニューになるような、ステーキだって! そんなものできらあ!」
審査の結果、勝負の軍配は、鉄人、なんらかの鳥に上がりました。
最後は卵の殻で車を作りました。車の動力は、なんだったかはわかっていませんがサイバーで人間並みの知能だったのでなんとでもなったのでしょう。
おしまい。(ふたごののねずみに花束と鉄人の称号を)